euphoria

映画『ユーフォリア(原題)』。そのタイトルになっている euphoria「ユーフォリア」は、「多幸感」と訳されている。この言葉が、物語の舞台が「とある場所」であると知った時に、そのイメージとつながった時に浮かび上がってきたものが何であったのか?

この作品が最初にお披露目されたのが、2017年9月8日の「Toronto International Film Festival(T.I.F.F.)」の会場であり、監督自身はそのインタヴューの中で、この作品については次のように、「欧州でいま増加現象にある「自殺ほう助」についてこの作品が議論を呼び起こすだろう」と語っていた。その行為と、それを受け入れて死を待つ人を看取ることについて。先の「浮かび上がってきたもの」が自分の思考を停止させ、感情の赴くベクトルが向かった先に答えがあるのかと、そこまでこの作品によってある地平まで連れてきてもらっていながら、そこからは一人で歩むことになる、その不安と大きな未知の扉を前にして、自分は逡巡している。

この物語の舞台は架空の安楽死のための療養施設。療養というのは正しくはない。療養施設はその病を治療することが目的であり、すでに回復する見込みのない人々が、この物語の舞台になる施設を死ぬ場所と定めているのだから、そこは療養のための施設というものではないだろう。タイトルの euphoria は、その死を迎える場所、そこで過ごすこと全てのたとえになっている。

SUPPLEMENTS
「多幸感」とは、人が喜びや興奮などを感じる、感情的な状態のこと。中毒性のある薬物によって、それらの感情を意図的に誘引させる場合もあり、有酸素運動、笑い声、音楽によって喚起される高揚感なども含む。この状態は、躁病などの神経精神医学的な障害の症状である一方で、恋愛や愛情による人間同士の関係や、性的な反応が、この感情の誘発要因とも関連していると考えられている。また、広義には、「プログラミング言語」の一つの名称でもあり、薬学で言われる「熱狂的な陶酔感」や、経済学上の「景気循環」を表す語句などを意味する。日本語ではゲーム・ソフト名やそこから派生する楽曲名、また、おしゃれ系のショップの名前にも使用され多岐に渡る。

GAKU
アリシアさん、これはどんな物語なんですか?

アリシアさん
物語は2人の姉妹の話。彼らは、何年も会っていないような関係で、それぞれが辛い生活をしながら違う人生を送っている。ある日、お互いが会おうってことに賛成して会う約束をするの。休暇で一緒にどこか旅に出かけましょうって。でも物語のはじめに大きな転換期となる事件が起きて・・・

上記で、主演のアリシア・ヴィキャンデル氏にあらすじの冒頭動画 from hollywood reporter – を語ってもらったように(勿論、これはシャレですからね)、お互いが疎遠になっていた姉のエミリーと妹のイネスが連れ立ってヨーロッパへ旅立つが、姉は妹に行先を何も告げず、妹は姉がどこへ向かっているのか、その目的地を知らずにただつき従っている。

監督自身は、この物語は人がそれぞれに抱えている「痛み」にどうやって向き合っていくのか、お互い異なる考えを持った二人が一緒になってこの回答を見つけようとする話だと説明する。その痛みという試練の中で、いかに誰か他者を必要とするのか、それが家族の一員であるのかどうかという。「西洋的基準でいう自由は責任の問題でもあって、その責任は自分の幸せに対する責任でもある」という彼女の説明、本国スウェーデンを離れ初の英語圏への進出に、意気込みと英語での自己表現の戸惑いをのぞかせ、それは少し不要だったかな・・・ その後にすぐさま製作サイドでもある主演のアリシア氏が監督をフォローしていた。

「痛み」と聞いてすぐに思いつくのが、スイスなど欧州での安楽死、自殺ほう助の合法化という重い社会問題。この作品が背景とする問題に向けたメッセージを、冒頭で監督の言葉として記したが、そういう主張めいたものをこの作品の中に強くは感じなかった。先に、「自分は逡巡している」と言った未消化な部分は、再見した後に感想としてもう一度ここに記していきたい。

header photo: 44 metes high treetop-walk tower in nationalpark bayerischer wald in bavaria, germany.

MEMO
【記録】映画『ユーフォリア Euphoria(原題)』/ 監督・脚本:リサ・ラングセッス Lisa Langseth, 作品:『Hotell』(2013), 『Pure』(2010), 『Godkänd』(2006)/ 音楽:リサ・ホルムクビスト Lisa Holmqvist / 撮影:ロブ・ハーディ Rob Hardy / 出演:アリシア・ヴィキャンデル Alicia Vikander / エヴァ・グリーン Eva Green / シャーロット・ランプリング Charlotte Rampling / チャールズ・ダンス Charles Dance / マーク・スタンリー Mark Stanley / 制作:ビカリオス・プロダクションズ Vikarious Productions / 制作国:ドイツ、スウェーデン/ 言語:英語/ 2017年制作/ 日本公開未定/ 関連記事:付記「ラングセッス監督とアリシア・ヴィキャンデルの事」