wonderstruck

we are all in the gutter, but some of us are looking at the stars…..

INTRO
【解説】映画『ワンダーストラック Wonderstruck(原題)』について。挿絵作家の原作者の作品は、他には『Hugo(邦題『ヒューゴの不思議な発明』)』としてマーティン・スコセッシ氏 Martin Scorsese により映画化された。この作品『Wonderstruck』(11月27日寄稿時の現在未邦訳)も、「ヒューゴ」と同じように、氏自身による鉛筆画のような精巧なイラストがついていて、2つの世界が同時に進行する。一方の過去を遡る少女の物語はイラストの中で語られていて、このイラストは単なる「挿絵」ではない。

物語は同じ合衆国に暮らす少年と少女のお話でストーリーが別々の時代で語られる。この別々の1977年と1927年のニューヨークでそれぞれ進行する物語がどのように結びついていくのかが一つの見所。脚本も原作者が参加している。監督は『キャロル Carol』(2015年)や『アイム・ノット・ゼア I’m Not There』(2007年)を監督したトッド・ヘインズ氏 Todd Haynes。本年度2017年作品の、本記事投稿者の「ベスト・ムービー」である。モノクロの少女の物語では、外界である街へ飛び出した少女の不安や驚きに満ちた表情がとてもいい。原作の本書は児童文学書としてだけでなく歴史書としてもカテゴリーに入れられ評価されている。

STORY
【物語】夜、森の闇の中で、男の子が逃げている。その後を2頭の狼が追う。少年が悪夢から呼び起こされたのはいとこのロビーの声。これは少年が毎晩見る悪夢である。少年の名前はベン。ベンジャミン・ウィルソン。冒頭の数分で彼がどのような環境にいるのかが分かる。ベンは叔母ジェニーとともに彼らの家に住んでいる(もう一人ボビーには姉ジャネットがいる)。ミネソタ州・ガンフリント Gunflint, Minnesota1977年。ベンはベッドに戻り、新聞の切り抜きを見る。それは一人の女性司書の交通事故死を報じたもので、これがベンの母親であることが、次に葬儀のシーンが挿入されることで分かる。そこから母親と一緒だったときのある晩の回想シーンになる。

ベンの部屋はさながら資料館のようだ。博物館の展示棚のように、様々な「モノ」が、集められ、タグ付けまでされ、陳列されている。司書の母親の影響だろうか。その部屋へ母親のエレーンが入ってきて何かをベンに投げ与える。ベンが回想しているその日は、ベンの12歳の誕生日だ。何か特別にお祝するような場面はなく、母親のエレーンがベンにお財布をプレゼントする。待ってましたとばかりに、ベンは父親のことを母エレーンに尋ねる。パパは宇宙飛行士だったのと。だから僕も星が好きなんだね。エレーンは何も答えず、「誕生日おめでとう、12歳さん」といって部屋を出て行く。エレーンは自分の部屋でレコードをかけタバコをふかす。その時かかる曲がデヴィッド・ボウイの『スペイス・オディティ Space Oddity***01 』だ。ベンがエレーンの部屋に現れる。父のことを知りたいのだという。誕生日のたびにおそらくベンはこのように母親に尋ねていたのだろう。大きくなったらとか、この次の誕生日にとか・・・ そう母エレーンから言われていたのかもしれない。「ベッドに戻って」と母エレーン。ベンはいつなったらパパのことを教えてくれるのかと食い下がる。話すべき正しい時期があるのよと母の言葉に、そんな時なんか来ないさと、部屋を出て行きかけた時、ベンは、エレーンの部屋兼仕事場(図書館研究室のように資料に埋まっている)た)の壁に貼られた紙片の言葉についてたづねる。

冒頭で引用した言葉である。これは何なのと尋ねるベン。母エレーンはベンに、「あなたはどう思うの?」と質問で返す。ベンは、いつもママはそう言うねといい、ここでこの回想シーンが終わる。先の紙片は、今はベンのベッドの横に貼ってある。

ここで星空から、「スター」を見上げる少女の場面へと移る。「スター」の雑誌の文字。ここでの「スター」とは、映画スターのこと。雑誌には映画スターの女優の写真が載っている。少女はそれを破り取ってそのまま逃げ出す。書店の主人が怒り出し追いかけようとする場面だが、音声が無い。白黒の映像である。少女は湖畔まで逃げて行きそこで紙に「助けて」と書いて、折り紙の船を作って水の中へ流す。ニュージャージー州・ホーボーケン Hoboken, New Jersey1927年

「湖畔」ではなく、この辺りに入り組んだ河川が多い、ハドソン河やアッバー湾などの海浜・港湾の近くだったのかもしれない。波に揺れる小舟が船着き場の杭に当たり、その音が、ベンの住む水辺の家にある船が揺れ杭にぶつかる音にかぶさり、2つの時代、少年と少女2人の物語が交差しながら進んで行く。

寝付けづにいるベンは、波の音と小舟の立てる音が気になり、戸外を見る。嵐が近ずいているのか波が立ち始め、風と遠雷も聞こえる。自分が母と住んでいた家が同じ敷地内にあって近くにある。今は誰も住んでいないはずだが、明かりが点いている。家に入って行くと誰かが母の『スペイス・オディティ』のレコードを聞いている。母親がそこにいるような気がして部屋に近づくベン。そして、場面が変わり、少女の時代。

少女は女優「リリアン・メイヒュー Lillian Mayhew 」の切り抜きを集め、スクラップ・ブックを作っている。ファン・レターを出した時にその返事がきたのだろう。その葉書を大事にそこに置き、楽しそうに作業をしている。窓から遠くに見えるビルの景色を少女は新聞や段ボールで自分の部屋いっぱいに再現している。そこで再び、場面が変わる。母の部屋に入ったベンは、そこに母の衣装を着てタバコを吹かしているボビーの姉を見つけ、勝手に家の中にいることに怒り出した。ここでまた少女の場面。映画館へ一人で出掛ける。劇場にかかっているのは、パラマウントの『リリアン・メイヒューの嵐の娘』。伴奏のオルガンが場内にある。その映画の中でも嵐が起こっているが、まったく音声が無い。

またベンの時代。ボビーの姉ジャネットが出て行った後、ベンはしばらく家の中で思いに沈み込み、母の私物から紙幣の入った缶空や、タイトルが『ワンダーストラック』という、博物館の展示目録兼キュレーター curator(司書・学芸員等)のための啓蒙書(『 WONDERSTRUCK – Cabinets of Wonder 』***02 )を見つけて手に取り、そこの中に挟まっていたしおりを見つける。ここで、少女が見ている映画の中で起こっている嵐と、ベンの時代に起こっている嵐が、それぞれを2つの時代を交差させる。

雷鳴が激しくなる中、ベンは書店のしおりを手に取り、その裏に書かれた母エレーンに当てられた言葉と、それを宛てた相手の名前「ダニー」とあるのを見つける。父に間違いないと思ったベンはその書店の電話先***03へ電話をしようとし、そこへ突然落雷があって、それが電話を伝いベンは感電、そのまま意識を失ってしまう。

映画を見終わった後涙を吹きながらそこを後にする少女。劇場の外も激しい雨で傘を持たない少女は途方にくれるが、そこに「初期トーキー作品の実験的な上映」であると宣伝している看板が目に入る。それを羨ましそうに眺め雨の中へ飛び出して行く少女。そうか、無音の世界はこの少女の音のない世界だったことに気づく。意識が朦朧とするベンは病院で目覚める。ベンは、電話越しに落雷による衝撃を耳元に受けて、ベン自身も聴覚を失っていた。

ground control to major tom  10, 9, 8, 7, 6 …..

MEMO
【記録】原作者:ブライアン・セルズニック Brian Selznick イラストレーター・児童文学作家・脚本家 作品:『 Wonderstruck 』(2011年)/『The Houdini Box』 (1991年) /『The Robot King』 (1995年) /『Boy of a Thousand Faces』 (2000年) /『ユゴーの不思議な発明 The Invention of Hugo Cabret 』(2007年) /『The Marvels』(2015年)
MEMO
【映画『ワンダーストラック Wonderstruck』の挿入曲】Space Oddity 』デヴィッド・ボウイ David Bowie /『Sunrise』ローズ・ロイス Rose Royce / My Blue Heaven』ジーン・オースティン Gene Ausfin /『Also Sparach Zzarathustra』デオダート Deodafo /『All The Way Down』エスター・フィリップス Esther Phillips /『Evening Star』 フリップ & イーノ Fripp & Eno /『Fox on the Run』スウィート Sweet /『 Space Oddity 』 ラングレイ・スクール・ミュージック・ プロジェクト The Langley Schools Music Project
MEMO
【記録】映画『ワンダーストラック Wonderstruck(原題)』/ 監督:トッド・ヘインズ Todd Haynes 作品:『エデンより彼方に Far from Heaven』(2002年), 『アイム・ノット・ゼア I’m not There』(2007年), 『キャロル Carol』(2015年), 『ポイズン Poison』(1991年)/ 『Six by Sondheim』(2013年)/ TV『Enlightened』(2011 – 2013年)/ TV『Mildred Piece』短編『Sonic Youth: Disappearer』(2004年)/ 『Corporate Ghost』(2004年)/ 『ベルベット・ゴールドマイン Velvet Goldmine』(1998年)/ 『Safe』(1995年)TV短編『Dottie Gets Spanked』(1993年)/ 『Goo』(1991年)『Superstar: The Karen Carpenter Story』(1988年)『Assassins: A Film Concerning Rimbaud』(1985年)短編『The Suicide』(1978年)/ 脚本:ブライアン・セルズニック Brian Selznick / 撮影:Edward Lachman / 音楽:Carter Burwell / 主演:オークス・フェグリー Oakes Fegley / ミリセント・シモンズ Millicent Simmonds / ジュリアン・ムーア Julianne Moore / ミシェル・ウィリアムズ Michelle Williams / コーリー・マイケル・スミス Cory Michael Smith / ジェームズ・アーバニアク James Urbaniak / ダミアン・ヤング Damian Young / パトリック・マーニー Patrick Murney / Lauren Ridloff / Anthony Natale / 制作国:アメリカ合衆国 / 使用言語:英語 / 日本公開日2018年4月6日/ 制作年2017年

3 thoughts on “wonderstruck

  1. 01 Space Oddity David Bowie

    Ground Control to Major Tom/ Ground Control to Major Tom/ Take your protein pills and put your helmet on/ Ground Control to Major Tom 10, 9, 8, 7, 6…/ Commencing countdown, engines on 5, 4, 3…/ Check ignition and may God’s love be with you 2, 1, liftoff/ This is Ground Control to Major Tom/ You’ve really made the grade/ And the papers want to know whose shirts you wear/ Now it’s time to leave the capsule if you dare/ “This is Major Tom to Ground Control/ I’m stepping through the door/ And I’m floating in a most peculiar way/ And the stars look very different today/ For here/ Am I sitting in a tin can/ Far above the world/ Planet Earth is blue/ And there’s nothing I can do/ Though I’m past one hundred thousand miles/ I’m feeling very still/ And I…

  2. 03 kincaid books

    ベンが母親の部屋で見つけた『ワンダーストラック』の本。その中に挟まれていたしおりには、父親と思われる「DANNY」から母親に宛てた言葉が書かれていた。そのしおりに記載された書店名を手がかりにして、ベンは父親探しの旅に長距離バスに乗って出発する。書店の名前が「Kincade Books」。「キンケイド」は人名。家族の名前はその起源を語ってくれるものだが、この姓名は古代ケルトを発祥とする。しかし、この物語ではどのような謂れがあるかは、想像はできるが、特に何も語られてはいない。ベンが記載の住所を頼りにしてたどり着いた場所はすでに閉店していた。書店の住所: West 81st Street, New York, New York/ 通りがかった少年ジェイミーから書店はすでに移転していることを教えてもらう。この通りの側にはこの物語の舞台の一つ「アメリカ自然史博物館 American Museum of Natural History 」がある。

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