the school

INTRO
【解説】豪州発の恐怖映画『The School(原題)』は、今年2018年に公開予定。女医のエイミー・ペインの息子は昏睡状態にある。彼の心はどこにあるのか。行方不明になった息子を探すためエイミーが陥ってしまった場所は。彼女は存在しない廃墟の建物の中に閉じ込められてしまう。そこは一度入ったら二度と出ることができない閉鎖された学校だった。2人の医師以外は、登場人物はファースト・ネームしかテロップされていないし、みんな学校の生徒みたいな少年・少女で、しかもその出で立ちがみんな異様だ。ゲーム参加のためのコスチューム、オンライン対戦等みたいな設定キャラなのか。

ところでこの映像は何故か懐かしさを感じるのは自分だけかな。マオリ族を彷彿とさせる戦闘用フェイス・ペインは、河童や狐のお面をつけて境内で遊ぶ子供達を連想させ、遊んでいるうちに、その一人だけが神隠しにあっていなくなってしまう・・・みたいな。ガキ大将の登場、みんなを束ね命令するとか、むかしの遊びがもっていた怖い点、例えば、行きはヨイヨイ帰りはコワイ・・・の「通りゃんせぇ」。そんな古い日本の遊戯のイメージが蘇る。

学校という閉鎖された空間・社会で、表立っては見えてこない、内在化するイジメの、精神的な構造やその暴力の背景とか、例えば「イジメ」に内在する構造は、「鬼ごっこ」や「かくれんぼ」という遊びの中でロールプレイできる同じような構造があって、この作品の物語も、そのかくれんぼや鬼ごっこをイメージさせる。この作品は内在化し隠れてしまっている点を視覚化、物語化しているが、この物語は「遊び」ではなく死のゲームだ。

現在、作品のストーリーはまだわずかしか公表されてはいない。その中で監督自らが語る内容は、非常に興味深いものである。監督自身は、子どもの頃に好きだった『ピーターパン』の物語が、この作品のアイデアの原型にあって、「ピーターパン」の物語の中の小さな要素を、この「ダークファンタジー」の中に込めたと言っている。そして、この物語の「学校」という場所は、「煉獄の世界(地獄)」の一種であるという。そこは子どもが死んでしまった時に自分自身を見つける場所かもしれない。そこでは子どもが永遠に抜け出すことができないでいる場所。一人の母親は、自分の子どもと同じような、子ども達によって支配されている世界の中をさ迷い、自分の息子を探し出そうとする。この「学校」という場所は、「ピーターパン」のダークな面を描いた『蠅の王』 Lord of the Flies***01 の状況そのものであると。この登場人物の母親は、この学校という異世界に君臨するリーダーが、その場所に非常に長い間囚われ住み続けている闇の存在であることをやがて突き止め理解していくという。

この映画は、1823年建造の、オーストラリア最古の「精神病患者の収容施設」、ターバン河の入り江にあり、かつて「ターバン・クリーク精神病患者収容所」と呼ばれ、現在を「グレイデスビル精神病院」という、元々は家族が公からその身内を隠すために使われていた施設、敷地内には現在も身元不明の墓跡が1,200基あるそうだ、その実際の場所を使用し、美術セットを行い撮影された。ビジュアル的な斬新さを加えて蘇ったこの「廃校」が恐怖の舞台。その演出と造形が非常に好きな作品だ。


ザインくん
侵入者には警戒しろ。ルールに従って遊ぶのか、それとも死を選ぶか?

beware those who enter, playing by the rules… or die playing

SUPPLEMENTS
【語句補遺】01 Load of the Flies「蠅の王」は、『旧約聖書』で記述される古代オリエントの、ペリシテ人が信仰していた豊穣を司る神「バアル・ゼブル」のこと。ヘブライ人がカナン(イスラエル)の地に入植した時に、それを「邪教神」の意である「バアル・ゼブブ(蠅の王)」と蔑んだとされる。また、キリスト教では「人間を死に至らしめる7つの感情・欲望」のうち、「強欲(暴食)」の象徴として「新約聖書」にその名「蠅の王」が記されている。ここから、「蠅の王」ベルゼブブ Beelzebub、Beelzebul が「悪霊の大王」の名の一つとして知られるようになったとされる。

この名を題名にして、ウィリアム・ゴールディングが『蠅の王(The Load of The Flies)』(1954年)を著作、孤島での少年たちによる生存本能や、孤立し暴力化していく彼らの社会性、人間の本性を描き出している。アッシュウッド監督がいう「蠅の王」の物語とは、この作品のことを云うが、そこで描かれているものは、映画『The School』にも通底し題材にされているテーマだ。


DATA
【記録】監督・脚本:ストーム・アッシュウッド Storm Ashwood(初長編作品)作品:短編『 MOTH(原題)』(2015年), 『シークレット・オブ・ハロウィン Boys in the trees』(2016年)等スタッフ参加。 / 脚本:テッサ・アラナ Tessa Alana / 撮影:アーロン・マックリスキー Aaron McLisky / 音楽:マイケル・リラ Michael Lira / 出演:ニコラス・ホープ Nicholas Hope / ミーガン・ドラリー Megan Drury / ウィル・マクドナルド Will McDonald / テキサス・ウォッターストン Texas Waterston / ミリー・アルコック Milly Alcock / リア・アッシュウッド Leah Ashwood / シェリル・クレイグ Cheryl Craig / クリスチャン・ウィリス Christian Willis / サシー・スーピディス Sassy Soupidis / アレクシア・サントスオッソ Alexia Santosuosso / アイヴィ・リ Ivy Li / ジャック・ルワルド Jack Ruwald / ジャスパー・ロイド Jasper Lloyd / バネッサ・ロジャース&アルナ・ロジャース Vanessa & Arna Rogers – No Frills Twins / 制作国:オーストラリア / 使用言語:英語/ 日本公開未定 / 制作年:2017年

first teaser trailer released 19 august, 2017.
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